スマホが学力を破壊する
川島隆太『スマホが学力を破壊する』(東京、集英社、2018-03-21) スマホの使用によって直接、脳の機能が低下している。 スマホにかまけて勉強時間や睡眠時間の減少を招き、勉強時間や睡眠時間の不足が学力低下を招くという形の、間接的な影響ではないことがわかった。もちろん、スマホに長時間を費やすと、必然的に勉強時間や睡眠時間の減少も起こり、脳機能の低下とダブルパンチで悪循環となり、学力が顕著に低下する。 脳の機能低下は、前頭前野の抑制という形で起っている。これは、スマホに限らず、ゲームやテレビなどの、IT デバイス全般にあてはまる。紙のメディアではこのような悪影響は起こらない。 また、マルチタスキング(ながら行為)も学力の低下の影響が大きい。 ただし、著者は、マルチタスキングと前頭前野の抑制との関連性には何も触れておらず、ただ両方を並べて提示しているに留まる。 最後に記したように筆者は「マルチタスキングが悪い」「前頭前野を抑制する IT デバイスが悪い」とバラバラに「あれは悪い、これも悪い」という段階の提示で留まっている。その辺りをちゃんと考察してみるならば、 IT デバイスは前頭前野を抑制し、思考能力を鈍麻させる(言葉通り「阿呆」な状態にするわけだから「デジタル阿片」とでも呼ぶべきか)という直接的な悪影響効果がある。 一方、マルチタスキングや、オンラインゲーム、LINE などのソーシャルアプリと、スマートデバイスは、依存性を高める効果がある。スマホが悪いと「わかっている」つもりでも、口先でそう言う当人は、止めることができない。酒、タバコ、麻薬の依存症と全く同じである。手元にスマホがあると、頭で良くないとわかっていても、手が伸びて触ろうとしてしまうのである。24 時間体制で変動のあるソーシャルアプリやオンラインゲームも、心のどこかで常にその物事に心が釘付けにされている。