正規購入の iPhone が偽物という事件

ソフトバンクがiPhoneの修理を拒否?Twitterユーザーの報告が話題」というニュースを目にした。

このニュースは、そもそものソースのユーザーの印象をそのまま受けたニュースとして拡散しているので、基本的には「ソフトバンクの対応が酷い」という主旨の話題として取り上げられている。

しかし、僕が個人的に、このニュースにひっかかるものを感じて、ピンときたものがあったのは、昨年 2015 年の 5 月頃の出来事のことである。

当時、知人(女性)が古くなって使い勝手の悪くなった Windows ノート PC をどうにかしたいと相談してきたので、たまたま、新しい 12 インチの MacBook が登場したばかりのタイミングだったので、「渡りに船」とばかり、勧めて、彼女は MacBook を購入したのだった。アップル・オンラインからの直接購入である。

そしてその際、一つだけ、僕の趣味を反映してもらって、US キーボード版にしてもらった。そのためか、日本国内からではなく、香港からの発送となった。

従来の MacBook Pro や MacBook Air のユーザーが様子見で、まだ世間では MacBook の評価が定まっていない時期、彼女は届いた MacBook に大喜びだった。しかし──

その MacBook が、約 1 ヶ月で故障し、立ち上がらなくなったのである。

彼女は、アップル製品の正規サービスプロバイダであるクイックガレージに持ち込むなどして、数日の紆余曲折を経た結果、最終的に「初期不良」との診断となり、交換となった。

次に送られてきた新品は、見違えるように、快調なものだった。

事態が落ち着いてから、彼女が漏らした感想は、「最初の機体はりんごのマークのロゴが腐食してくすんでいた。新しい機体はピカピカだ」というものだった。

僕は、「もしかして、香港から送られてくる、その過程で、内部の人間が偽物(または廃棄されるべき不良品)とすりかえた可能性があるかもしれない」と思った。アップルという会社自体に対する信頼が揺らぐものでもないが、あれだけ大きなグローバル企業だから、内部に不貞の輩が入り込んでくることは、どうやっても避けられないだろう。

MacBook も 2016 年版くらいになると、そろそろ従来のアップル信者も使い出してきているようだが、当時のリリースされた当初はあまり売れておらず、それも、US キーボード版を注文したので、香港から日本へと転送されるオーダーは珍しかっただろう。だから、余計にバレにくいと、不貞の輩であれば、考えたのかもしれない。

まあ僕も、アップルという会社にはどちらかというと好印象があるので、その時この件は特に公言せず、内密にしていた。アップル製品にはこういうこともあるのだと、心に留めておいて、自分が製品を買う場合には、自衛するつもりでいた方がいいだろうと。

さて、今回のソフトバンクの事件で、僕が思ったのは、「それ、本当に偽物なのではないか」ということである。知人の MacBook の事件のように、アップルから直接買っても、偽物にすりかえられたものを掴まされる可能性があるわけである。ソフトバンクから正式に購入したものであっても、中には、中国からの出荷の過程で、偽物にすりかえられたものが混っている可能性があるのである。偽物と判断された iPhone の筐体の色は明らかにおかしいが、知人の MacBook も、りんごマークがくすんでいるなど、外観からしても明らかに不審な状態だったのだ。

そして件のニュースのユーザーは、ソフトバンクの対応に怒っているが、どちらかというとこれに関しては、ソフトバンクに同情的にならざるをえない。歯切れの悪い対応は、アップルとの契約の関係上のものだろうと思うからだ。僕の知人の場合は、当のアップル自身から直接買ったものだから、アップルは黙って交換しただけである。ソフトバンクの場合、正規扱いで販売したものであるのに関わらず、結果的に偽物だった。偽物をアップルに回すと、おそらく、アップルから、ソフトバンクでの販売以降ですりかえた iPhone なのではないかと、結構厳しくやられるのだろう。だから、店頭の担当者は、そういったバックでの状況を反映して、ユーザーに厳しい態度を取ったに違いないと思うのである。

アップルのキャリアに対する「汚れ仕事」の押し付けは、相当なんだろうと思う。ユーザーは(僕もその一人だが)、アップルの好印象なところだけと接していられる。こういう汚れ仕事は、アップルはできるだけ自社で引き受けないで、キャリアがフロントに立って引き受けるようなビジネス構造にしている。言ってみれば、澄ました顔で高給を取ってる NHK の正規の職員と、薄汚れた薄給の末端の NHK 受信料の集金人の関係みたいなものか。不満をぶつける先が本当は違うということである。

スティーブ・ジョブズという、生身のカリスマが君臨する限りは、こういった多少の無茶(ファシズム)も許されたのだ。彼なき今、ただの組織というシステム化された形で、このような強権(ファシズム)を稼動させ続けてはだめである。問題は、ティム・クックは、自分がジョブズのようなカリスマは持っていないということは熟知しており自分がジョブズのように振る舞うようなことはしない良識を持っているのだが、システム的な部分での運営能力が非常に優秀で、ジョブズが健在であった時期のアップルのまま、強権体制を稼動させ続けている点である。

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