板読み投資術

UnsplashAdam Nowakowskiが撮影した写真

坂本慎太郎『朝 9 時 10 分までにしっかり儲ける板読み投資術』(東洋経済新報社、2017-07-27)

  1. 年収 1 億円ディーラーの投資術
  2. 板読みの基本の基本
  3. 板読み投資の基本テクニック
  4. 銘柄選びの基本テクニック
  5. 板読み投資の実践テクニック
  6. 最後はメンタル──テクニックよりも大切なこと

第 1 章:年収 1 億円ディーラーの投資術

「板が薄いから誰も売ってこないんだよ」
目から鱗とは、まさにこのことです。
私は、いつでも逃げられるように買い板の厚い銘柄を選んでトレードしていましたが、この先輩は、「買い板が薄くて逃げにくい銘柄だから、誰も売らないので株価が安定している」というロジックで、わざわざ買い板の薄い銘柄を選んでいたのです。

ときどき成行の投げ売りをしてくる投資家もいますが、それで株価が下げたときには、単なるイレギュラーによる売りだから、買えばいいというスタンスなのです。

この話を聞いたとき、これは株式投資の縮図だと思いました。
やはり、イレギュラーによって生じた株価のブレを取りに行くのが、トレードの基本です。そう考えると、この先輩のトレードは、究極の板読みではないかとも思えたものです。
何しろ、いまはここの買い板が無いけれども、いずれ株価が下がれば自然のうちに買い板が出てくるという考え方に基づいて、それに先回りしてポジションを取っているのですから、これは上級の板読みトレードです。

したがって、この先輩は常に 30 銘柄、50 銘柄というように、実に幅広い銘柄に分散投資していました。
たくさんの銘柄に買いを入れていくので、この先輩はまだ板がほとんど出ていないような、朝の 8 時くらいから、それこそ数百銘柄の板を見ていました。
そして引けた後、もう一度、数百銘柄の板を見ているのです。
こうして数千円、1 万円という小さな利益を積み重ねて、1 日の利益を生み出していました。

第 2 章:板読みの基本の基本

約定ルール(優先順位)
  1. 成行
  2. より高い買い指値、より安い売り指値
  3. より早い注文

強い板・弱い板

買い板の厚い板を選ぶのは、「確実に上がる」からではなく、いち早く他の買い勢に売り付けて逃げるため。

上がる目算の方は、売り板の薄さで選ぶ。

この双方での期待値的なイレギュラー度の高さを板の「強さ」と捉えているようだ。

板に表れる投資家

機関投資家
ダラダラと続く
儲けたいアルゴリズム
スキャルピング高速売買で板情報が常時チカチカしている
買いたいアルゴリズム
VWAP 取引。出来高に応じた注文になるので、当然、この存在による取引は出来高の多い寄付きに与える影響が最も大きい
個人投資家
需給を大きくブレさせるイレギュラー化度の高い存在

1 〜 4 のうち、板読み投資術では、個人投資家の動きを先読みすることが一番重要となる。

第 3 章:板読み投資の基本テクニック

5 手先を読む

先を読むのは株価そのものではなくむしろ「自分がここで買ったら、他の投資家はどう動くか、いったい誰が参加してくるのかを、板情報の数字の動きから読み解きながら、ストーリーを描く」ということにある。

大勢の投資家がどう動くのか見ることが、板読みを上達させる近道です。板読みとともにトレーディングを上達させるためには、買いが基本形になります。

同値売買で練習

短期トレードでは、最初に想定したリターンよりも少ないロスで損切りしないと、取ったリスクが見合わないことになります。だから同値であれば十分に OK なのです。

  • ボラリティリティの低い 13:00~14:00 あたりが時間帯としては適している
  • 出来高が最低でも 3000 単位以上ある銘柄を選んだ方がやりやすい

ともかく、逃げ方を練習して、(取ったリスクに対して)できるだけ少ないダメージで逃げるのに上手くなるために練習する。

成功への近道は、利益も損失も増やすこと

勝率よりも、取るリスクに対する期待値(リターン)の差を大きくする戦略が大事。(リスクが大きくなれば、当然、損失も増える)

トレーダーの 2 タイプ

損して熱くなる
3 銘柄くらいに分散させるとよい
損して冷める
1 銘柄で株数を増やすとよい

成行は使わない

第 4 章:銘柄選びの基本テクニック

板読みに適した銘柄の見つけ方

TOPIX100 銘柄は投資対象から外す
儲けたいアルゴリズムによる超高速売買でチカチカしているので、超大型株は無条件で対象から外す。
出来高が最低でも 1000 単元になる銘柄を選ぶ
ティックがしっかりと出る必要があるため。デイトレード的には 5000~10000 単元くらいだとさらに板が見易くてよい。
株価が 5000 円以上の銘柄を選ぶ
投資効率の観点から
ボラティリティの高い銘柄は狙わない
「短期トレードの場合、短い時間軸で大きなリターンを狙うほうが効率的だと考えて、1 日に 10% も株価が動く銘柄で短期の勝負を仕掛ける人もいますが、トレンドが出ているときに飛び乗っても、突然、がくんと株価が大きく値下がりして、大損を被ることがあります。」それに対して「板読みの短期トレードは、大きな値幅を取りにいくものではないので、わざわざ大きく損するリスクを抱えている、ボラティリティの高い銘柄は狙わなくてもいいのです。
値上がりしているセクターから探す

強い板を見つけたら、とにかく買ってみる

板読み投資で大事なのは瞬時の状況判断

板読みに適した銘柄選択のプロセスは前述したとおりですが、これを読んで、「業績や財務の条件は?」と思った方もいるでしょう。
はい。板読みでトレードをする場合、財務諸表を読み込むことも、将来の業績予測をすることも、いっさい必要ありません。
というよりも、この手の数字をチェックして、「よっこらせ」とパソコンに向かっている間に、板の状況はどんどん変わってしまいます。
たとえば、自分が買いの注文を入れたとき、すかさず他の買いがピッと入ってきたら、買いたいと考えている人が他にも大勢いると考えられますし、逆に買った瞬間に、売りが出てきたら、この値段で売りたがっている人が大勢いることが考えられます。

板読み投資をする場合、何よりも瞬時の状況判断が大事なのです。画面に表示された板情報から、即座に売り買いを判断するスキルが欠かせません。
ちなみに私は、0.5 秒で売り買いを判断できるように訓練しています。

株式ディーラーの投資行動には、多分にパブロフの犬的なところがあります。パッと板情報を見たとき、買い板が厚くて売り板が薄い、強い板の銘柄が目に留まったら、それだけで反応して、とりあえず買いに行きます。
そのときは、業績や財務諸表の内容なんかいっさい考えていません。強い板なら、とにかく買ってみるのです。

買い板が厚ければ、あてが外れたときに逃げられる

もちろん、あてが外れることもたくさんあります。
ただ、買い板が厚ければ、売りたいと思ったときにいつでも売ることができます。つまり、買った銘柄が見当違いだったとしても、すぐに切って逃げられるのです。
これはデイトレードをするうえで、とても大事なことです。

これが本書の大きなテーマでもあるのですが、板を先読みすれば、それだけ小さいリスクでリターンを得ることが可能になるのです。

短期トレードで、エントリーするポイントはどこかというと、いろいろ言う人もいますが、結局のところ、強い板になったときに帰結します。

買い板が厚くなり、売り板が薄くなった瞬間を狙って、大勢の短期トレーダーが、買い板の上を狙ってきます。
だから、その一歩、二歩手前でエントリーできれば、買い板が厚くなったところに売りをぶつけ、スムーズにポジションを決済できるのです。
このスキルを身につければ、買い板が薄くて、売るに売れないという状況は避けられます。

ここが本書の核心に思われるので、すべて書き抜いておいた。強いというか、やはり、逃げ道の確保が最重要で、「(上昇する)当て」は脇役に過ぎないという感じ。

8 画面環境

8 というか 9 のような気もするが、中央フル板に対して指数チャート→個別株チャート・為替→ランキング・HP のプラス 8 画面で囲んでいるようだ。

ザラバ中のチェック項目

日経平均先物価格
全体相場を把握しておく必要があるため。相場は先物取引を中心にして決まる傾向が強いので、全体の方向性を把握するために日経平均先物取引やニューヨークダウ先物取引の値動きをチェックする。
新興株指数
新興企業の株式を売買している場合は、当然東証マザーズ指数、日経ジャスダック指数も常にチェックしておく必要がある。日経平均とは逆相関。マザーズ指数は時価総額が高いそーせいグループ、サイバーダイン、ミクシィの動向にも注目。
TOPIX 規模別指数
TOPIX コア 30 や TOPIX ミッド 400、TOPIX ラージ 70、TOPIX スモールといった規模別指数にもざっと目を通すことで、大型株、小型株のどちらに資金が集っているかを把握する。1 画面で一瞥できるようにしておくとよい。
為替
常に監視が必要なわけではなく、たまに 1 分足チャートを視覚的に確認する程度で十分。センシティブな銘柄を予めピックアップしておいてトレードのチャンスが生まれた時に乗れるようにする。
東証 33 業種別株価指数
資金が向かっているセクターを把握する。為替や金利、日経平均などのファクターによるセクターの強弱の傾向をつかめるようになるとさらにいい。
イベント
特に「日銀金融政策決定会合」「経済指標」「中国株・人民元」

ポジション保有を検討するときのチェック項目

東証 33 業種別株価指数
資金が向かっているセクターを把握する(為替や金利、日経平均などのファクターによるセクターの強弱が変化する)。日経平均が下がっているのに、上昇しているセクターに注目。
同業他社の株価水準
注目セクターが見つかったら、その中の企業を比較。同業種の大型株から小型株までの値動きをチェック。
グルーピング銘柄群
セクターが違っていても、同時期に上場した IPO 銘柄群でこれまでに連動性があるものの場合は、グループ分けをして監視する。
ニュース
対象が絞られたら、注文を出す前にニュース(材料)を確認。株価が動いた時にもニュース(材料)を確認。
1 分足チャート
売買のスパン的により短い足の方がいい。価格予測のためではなく、チャートポイント(転換点)と値段を確認するために用いる。──他の投資家が注目している節目という意味だろうか。
歩み値
相場の勢いをブレイク時の大きな板の買われ方を把握するのに用いる。──これもやはり板に参加している投資家を把握するためだろう。
フル板を用いる。

第 5 章:板読み投資の実践テクニック

9:10 までに確定するのは、それ以降だと売り板が厚くなってくるため、「売り板が薄い」という条件を満さなくなってくるため。

寄付き前に 200 銘柄程度を巡回チェック
強い板の銘柄を見つける
見つけた強い板の銘柄を寄付き条件でエントリー
8:55 くらいに「寄付き条件」でエントリーする。深追い禁止、買い気配が上に切り上がって行ってさらなる上昇トレンドを予想させたとしても 9:10 には利益を確定させる。買った後、売り板株数が増えるだけでなく、売り気配が切り下がって詰ってきた場合には、(想定が外れたので)できるだけ素早く(傷の小さいうちに)撤退する。
ピッタリな銘柄は 200 銘柄のうち 3 銘柄くらい
トレード自体は 9:00~9:10 で終わるが、トレードに相応しい銘柄を探すのが大変だということに留意。
買いの順張りのみ
「買い板の順張り」「買い板の逆張り」「売り板の順張り」「売り板の逆張り」があるが、朝 10 分の寄付きトレードは圧倒的に勝率が高くなる買いの順張りのみとなる。
寄付き条件で
空振りすることもあるので、5 銘柄くらいに分散させられると理想的。ただの指値だと、下げ戻ってきたトレンドに巻き込まれる場合があるので危険。

ブレイク売買について

タートルズのようなスイング時間軸のブレイク手法に対して、本書の板読みによるデイトレ時間軸のブレイク手法は、ブレイクポイントで狙うのではなく、先読みして値幅に余裕のあるポジションでエントリーすることが勝負の鍵となる。板から需給を読むことで売り板を突破できるだけの大口の存在を念頭に置き、さらに退路を確保して臨む。

その他

  • 1 回のトレードで 0.5% のリターンを目指す
  • 1 回のトレードのロスカット額を決めるだけでなく、1 日の額も決めておく。この場合のロスカット額は 1 日で最高に儲けた額の半分程度にする

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