父の死 12 不動産の評価額
結論から言うと、遺産は全て母が相続し、母には相続税の配偶者控除が適用されるので、1 億 6 千万円分までの相続分に対する相続税は支払いを控除される(もし自分たち子供が相続したとしたら、その相続分に対する相続税の支払いは免れない)。幸か不幸か、父の遺産は母が全部相続しても、1 億 6 千万円まではとてもじゃなくて届かない額なので、母に全部相続させれば相続税の支払いについては心配しなくてよい。ただし、相続税が「元から発生しない」額というわけでもないので、本来は相続税が多少発生し、結果的に支払いを(母が配偶者故に)免除されるという扱いである点がミソである。この場合、納税額が結果的に 0 円であっても、税務署に申告する必要があるのである。
そこで、相続税の申告のために、父の遺産をリストアップする必要がある。現金・銀行預金は簡単である。少しだけ面倒臭いのが株であり、一番面倒臭いのが不動産である。株や不動産の場合は、「評価額」を出す必要があるためである。
株の評価額
評価方法は国税庁の Web ページに書かれている。相続開始日(死亡日)を基準として
- その月の毎日の最終価格の平均額
- その前月の毎日の最終価格の平均額
- その前々月の毎日の最終価格の平均額
の 3 通りを計算し、その中から一番低い価格を選べばよい。証券会社のツール(楽天証券のマーケットスピードなど)で、各銘柄の該当する 3 ヶ月分の CSV ファイルを出力し、表計算ソフト(mac なら Numbers、その他は LibreOffice や Excel など)に貼り付け、計算式をちょちょいのちょいで、どうにかなるレベルの物事である。
不動産の評価額
不動産の評価額が問題である。
まず、大まかな目安額を知る手段として、毎年支払っている固定資産税の明細を使うという手がある。相続税は公示基準価格の 8 割を評価額とするのに対し、固定資産税の方は 7 割らしい。なので、固定資産税の明細に記載されている不動産の額を 8/7 倍すれば、相続税の評価額をおおまかに把握することができるという話である。配偶者控除のボーダーラインである 1 億 6 千万のあたりに到達、超過しそうな人などは、そういった形で一応の見当をつけることができる。
自分の場合、この段階で不測の事態に陥ってしまった。戸建住宅なら苦労はしなかったのだろうが、父は分譲マンションを所有していた。その固定資産税の明細を見て、自分はすっかり勘違いしてしまったのだ。不動産だけで総額 1 億 6 千万に達してしまうと思い、その他に現金・預金・株の金融資産を合わせると、完全に超過してしまって、多額の税金を払わなければならないと……。
実は、マンションの場合、固定資産税の明細に載っていた土地の評価額は、マンション全体の敷地の額が載っているのである。実際には、その額に対して「共有持分の割合」に応じた額が相続の評価額となり、固定資産税の金額ともなる。しかし、固定資産税の明細には、持分割合の記載が一切なく、ただマンション全体の敷地の額と、持分の割合を計算に入れた後の、固定資産税額のみが載っていたので、すっかり勘違いしてしまったのである。
それも、明細のどこかに父の分だけの評価額が載っていると思い込んで明細を見ていたので、ケタが違うことを無視して、それらしき欄に記載された額を見て、都合の良いケタ数に一桁少ない額で考えて、それが評価額と思って見積りを立ててしまったのだ。
──実際には、その金額の 1/3 ~ 1/4 ほどの金額であった。
そんなわけで、当初どうすれば相続税を最小限にできるか 1 ヶ月以上に渡って悩んでしまったが、まったくそんな心配などない、ささやかな遺産総額であることに落ち着いた。一人相撲を取っていただけである。喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか、どちらなのかわからないが……。
評価額の出し方
上で述べたのは、固定資産税を元にした見積もりの出し方だが、実際には、固定資産税ではなく、相続税の評価額を出す必要がある。実際に相続税を支払う必要のあるボーダーライン付近やそれを超えている人の場合は厳密にする必要があるが、そうでない場合は、多少計算が粗くとも、結局は支払いに影響しないのであるから、それほど誤差を恐れる必要はないだろう。
国税庁から路線価の地図を見ることができるので、その路線価を基準に地形や面積に基いて評価額を算出するだけである。基本はそれだけ。より厳密にやると、税理士や不動産鑑定士に相談する必要はあるかもしれない。しかし、厳密にやると、微妙にさらに価格を下げることができるというだけで、明らかに配偶者控除の 1 億 6 千万に届かないウチのようなケースの場合は、そこまでやっきになる必要はない。
評価額が出せない場合
ところが、父の所有していたマンションのうち一つだけ、路線価がなく、「個別評価」の対象となる土地のものが含まれていた。再開発などで道路や地番が変動中の土地のようで、この場合は、国税庁の要否判定コーナーの見積りプログラムが利用できない。
仕方ないので、「個別評価申出書」なるものを税務署に提出して個別評価を申し込むことになった。Web ページからダウンロードした PDF を印刷して、適当に記入して提出してみた。
──すると、税務署の担当者から電話がかかってきて、仮換地証明書というものが必要だと言われた。国税庁のサイトにはそんなものも書かれていたが、必要かどうかよくわからないので、何も付けないで提出したのだが、そうは問屋が下ろさなかった……。
担当者が言うには、該当する区画整理協会に行けばもらえるということだったので、電話してみると、窓口で請求してもらえれば、2、3 日で発行できるとのこと。実際に行って請求して、昨日(2021-11-02)取りに行って、その足で税務署に行き、例の担当者にその発行されたばかりの仮換地証明書を直接渡した。
担当者の対応からすると、あまり、個人が自分でこういった事務手続きをする人間がいなさそうな反応だったが、特に言われた通りに行動を修正していけば済んだので、思いの他大変なことにはならずに済んだ気がする。個別評価終了には 1 ヶ月程度かかるとのこと。
不動産の評価額がマンションの上に、そのうちの一つは、個別評価が必要ということで、ちょっとした苦難の道であったが、どうにか事態は収拾できそうである。