伊藤園の投資指標について
2025年4月期(連結)予想 EPS (2025-01-26 時点掲載のもの)
- 伊藤園 IR 公式 12/2 の決算短信(要するに正解):140.70
- SBI 証券(ログイン必要):148.9(HyperSBI では、25/3 期(下半期)の 64.9 が 1/6 更新情報として掲載)
- 楽天証券:126.42(トムソン・ロイターからの情報提供)
- 松井証券:126.42(値は楽天証券と同じなので、要するにトムソン・ロイター情報ということだろう)
- 株探:145.7(古い 6/3 の決算短信に基いているが、通期予想は変化していないので同じ)
- Yahoo! ファイナンス:196.55
- IR Bank(Google 検索で上位に表示される身元不明の怪しいサイト):197.01
- Fisco:140.70
正解したのは Fisco だけ。要するに、担当者(中の人)にちゃんとわかっている人がいる証拠。100 点満点。
酷いのは、IR Bank とかいう運営者の身元がよくわからない怪しいサイトだが、もっと酷いのは、それと同じレベルに陥っている大企業が運営する Yahoo! ファイナンス。0 点。
楽天証券と松井証券は情報提供を受けているトムソン・ロイターの側の問題ということになるだろうが、これも一体どこからどういう計算で出てきた数値なのか不明。つまり、トムソン・ロイター自体が、怪しい組織ということになりかねない(実際そういう(日本に情報工作を行うための外国組織である)可能性も十分にある)。5 点。
正解だった Fisco 以外で比較的マトモだったのが、SBI 証券と株探だった。これは、普通株式と第 1 種優先株式の 2 種類の存在の扱いで誤っているものと思われる。50 点。
IR Bank / Yahoo! ファイナンスの不正な数値の導き出し方
決算短信では通期予想純利益が 17,200 百万円(要するに 172 億円)とされている。一方、普通株式の期中平均株式数は 87,509,909 株 とされている。
純利益÷株式数ということで、17,200,000,000 ÷ 87,509,909 = 196.55 で完全に Yahoo! ファイナンスの数値に一致する。
一方、通期予想なのだから、期中平均など使っても無意味であり、期末時点での自己株式を除いた株式数を使うべきだとすると、それらの普通株式の数値も決算短信にあるので、
88,212,380 - 906,095 = 87,306,285 株と計算できるから、それで純利益÷株式数を計算すると、17,200,000,000 ÷ 87,306,285 = 197.01 と、完全に IR Bank の数値に一致する。
ところが、どの時期の普通株式の株式数を使っても、無茶苦茶で、素人が適当に決算短信にある数値を拾って組み合わせて、計算しただけという話に過ぎない。普通株式以外に第 1 種優先株式(期中平均で 31,045,057 株)があり、それらを合わせた全体の(期中平均)118,554,966 株で、172 億円の通期予想純利益の全体をシェアしている。勝手に、普通株式だけで純利益の全体を使って EPS を計算してはならない。そんなことをしたら、少ない株数で割っているのだから、そりゃあ、本来よりも 1 株あたりの利益が不正に水増しされて当然である。公式発表の 140.70 という情報を無視した挙句、勝手に計算して、水増しした情報を EPS として世間様に発信しているという、ヤクザ仕事もいいところである。
SBI 証券や株探の数値の微妙なズレ
SBI 証券・株探にしても、なぜ決算短信公式発表の 140.70 という数値を素直にそのまま使わず、勝手に他の数値から計算してわざわざ別の数字にしているのか理解に苦しむ。が、この両者については、伊藤園特有の、非常に珍しい、普通株式と第 1 種優先株式という 2 種の株があり、それぞれ別々に、EPS が存在する、という状況に惑わされたものと思われる。IR Bank / Yahoo! ファイナンスのように、完全なド素人仕事というわけではないが、半端な玄人なだけに、他の株ではないパターンに対応できなかったものと思われる。
要するに、第 1 種優先株式(25935)の方の決算短信公式発表の通期予想 EPS は、152.70 となっている。これは単に捨て置いて、普通株式(2593)に関する投資指標の情報なのだから、普通株式の EPS である 140.70 を使えば良かったのだ。なのに、それをせず、おそらく、140.70 と 152.70 という決算短信に存在する 2 つの EPS の値の単純平均を取り、(140.70 + 152.70) ÷ 2 = 146.7 となり、株探の値に近くなる。また、普通株式と第 1 種優先株式を、(期末の)株式数の比率に応じて加重平均を取ると、(140.70 × 87,306,285 + 152.70 × 30,854,152) ÷ (87,306,285 + 30,854,152) = 143.83 となるが、数学の素人で加重平均がよくわかっておらず加重を逆にしてしまった場合、(140.70 × 30,854,152 + 152.70 × 87,306,285) ÷ (87,306,285 + 30,854,152) = 149.57 となり、SBI 証券の値に近くなる。
伊藤園 第 1 種優先株式(25935)の PER・配当利回り
SBI 証券等で伊藤園 第 1 種優先株式(25935)の PER 等の投資指標が表示されない扱いになっているので、自力で算出してはどうかと思って調べていたら、上記のように、そもそも普通株式(2593)の方も、情報サイトによって不正な値が堂々と提示されているという事態に遭遇したので、今回の記事をまとめることにした。
さて、問題の第 1 種優先株式(25935)の PER・配当利回りだが、公式に決算短信で示されている通り、EPS 152.70 という値を使って計算すればいいだけである。先週末(2025-01-24)の終値が 1810 円だから、予想 PER は 1810 ÷ 152.70 = 11.85 となる。予想配当利回りは、56 ÷ 1810 × 100 = 3.09%。1500 円相当の優待利回りは、15 ÷ 1810 × 100 = 0.83%で、合計すると 3.92% となる。
比較のため、普通株式の PER・配当利回りは、EPS 140.70 を使って、先週末の終値が 3400 円だから、予想 PER は 3400 ÷ 140.70 = 24.16 となる。予想配当利回りは、44 ÷ 3400 × 100 = 1.29%。1500 円相当の優待利回りは、15 ÷ 3400 × 100 = 0.44%で、合計すると 1.73% となる。
第 1 種優先株式は、議決権が無い代りに、配当が 1.25 倍と優遇されているという話だが、配当利回りの点からすれば、1.25 倍どころではなく、圧倒的に普通株式(1.29%)よりも買い得(3.09%)である。普通株式は 3400 円で 1 枚(100 株 34 万円)を買って、もらえる配当は年間 44 × 100 = 4400 円。第 1 種優先株式は、約半額の 1810 円だから、何なら 2 枚(200 株 36.2 万円)を買って、もらえる配当は年間 56 × 200 = 11200 円也。
また、他社の食品セクターの銘柄と比較する場合は、PER が目安となる。普通株式の 24.16 は高すぎるというほどでもないが、決して割安でもない感じがする。キッコーマンと同等程度だが、逆に言えば、キッコーマンと同等に評価されている国際的な優良企業であるということなのかもしれない。その優良企業の伊藤園の株が、第 1 種優先株式であれば、半額程度で買えてしまう(何なら普通株式を買う代りに 2 倍の数量を第 1 種優先株式で買えばいい)。第 1 種優先株式の PER は 11.85 だから、それこそ野菜飲料系のライバル企業であるカゴメと同程度の数値である。決して割高ではないことがわかる。
日経と東洋経済
日経と東洋経済(四季報オンライン)ではそれぞれ EPS は掲載していないが、掲載されている連結予想 PER と終値 3400 から逆算できる。これによると、伊藤園の EPS を、日経は PER 23.5 → EPS 144.7(合格ライン)、東洋経済 PER 16.84 → EPS 201.9(絶句……)と考えていることになる。今回取り上げた、全サンプル中、最悪なのが、東洋経済の値ということになる。ファンダメンタルズ派投資家のバイブル的存在の四季報が、この体たらくで良いのか……。